毎年恒例の夜の帰真園「秋の夜長」イベントは、今年も新型コロナウイルスの影響で中止とさせていただきました。昨年作成いたしました動画で、「秋の夜長の帰真園」の雰囲気を楽しんでいただければと思います。
十五夜のお月様へのお供え物
旧清水邸書院の縁側に置かれたお月様へのお供え物。これは昭和中頃に世田谷区喜多見で行われてきた中秋の名月でのお供え物を参考にしました。
左から
・おだんご15個
・お花(秋の園内で見られるススキ、シロシキブ、ホトトギス、タマスダレ)
・里芋
・薩摩芋
・栗
・柿
・梨
それぞれ15個ずつ。(薩摩芋、柿、梨は大きいので略して5個ずつ)
お供え物あれこれ
みなさんが何気なく目にしているお供え物のお団子やススキにも、意味があることをご存じでしたか?(たぐっちは知りませんでした…)
・お団子・・・十五夜にちなんで15個。白くて丸い満月を表すもので、米粉でつくります。収穫への祈り、感謝を表しています。
・ススキ・・・稲穂の代わりにススキを用います。子孫、作物の繁栄を見守ってくれる月の神様がこれに乗り移ると考えられています。
意味を知ると、行事をより味わい深く楽しめますね。
お団子の他に、おはぎや豆腐をお供えするお家もあったそうです。各地で内容は多様です。みなさんの地域はどのようなお供え物か、調べてみるのも楽しそうですね。
お月様が食べちゃった?
お月見のお供え物は知らない間になくなっていくもので、「お月様が食べた」とされました。これは近所の子どもたちが各家々を回り、竹の棒にくぎを刺したもので取って食べたから。人に見つからずにとれると、運が良くなると言われたそうです。もちろん大人は知っていて見守っていたのでした。甘いものが少なかった時代、子どもたちにとって、それは楽しみな行事だったことでしょう。
柿やおはぎが人気で、それらをお供えする家には大勢の子どもたちが集まったそうです。
お月見はつづく
喜多見の辺りでは十五夜を行った後の十三夜のお月見もやらなければならないと言われおり、秋に連続する収穫祭の一つとしての役割があります。畑作儀礼の意味もあるため、お供え物には、畑作物である大豆を材料とした豆腐が多く見られました。
月は陰陽の陰とされ、「お蔭さま」からこのような行事が行われるようになったとの説もあります。なかなか収穫などの実感の分かりにくくなった昨今ですが、食べるものがどこから来るのか、思いを馳せる時間にするのも、素敵なお月見ですね。
ご覧いただきありがとうございました。
(たぐっち)
出展:【喜多見 世田谷区民民俗調査第3次報告】
↑ 夜間映像
↑リハーサルの日中映像