渡りをする蝶アサギマダラ
高尾山周辺では、長距離を飛翔することで知られる「アサギマダラ」を観察することができます。
アサギマダラとは、マダラチョウ科の仲間の蝶で、ほぼ日本全国に分布しています。 成虫は、春から夏にかけて南から北へ移動し、移動先で世代を重ねた後、秋になると南へ移動します。
高尾山では春~秋に見られ、5月、10月頃に最もよく見られます。
渡りをすることが判明したのは1980年頃のことで、より詳しい渡りの解明のため、現在も調査がおこなわれています。
アサギマダラの渡りの謎
アサギマダラが渡りをするということは分かっていますが、
- なんのために長距離移動するのか?
- どうやって海を越えるのか?
- 海を渡るだけの体力をどこにたくわえているのか?
- 見知らぬ土地の方角がどうして分かるのか?
といった、アサギマダラが渡りをする理由や渡りをすることができる能力についてまでは、まだはっきりと分かっていません。 様々な推測がありますが、解明されていない謎が、アサギマダラにはたくさんあります。
アサギマダラの生態
蝶は一生を、卵→幼虫→蛹(さなぎ)→成虫の順で成長します。 卵から孵化した幼虫は、五令幼虫まで成長した後、蛹になります。蛹になってから20日ほどで羽化し、成虫になります。
(画像をクリックすると大きな画像で見られます)
卵 大きさは約1.5mm 紡錘形をしている |
幼虫(食痕) 弱令幼虫は食草を円状に傷つけてから食べる |
幼虫 終令幼虫は40mmほどに成長する |
蛹 アサギマダラは尾端からぶら下がる垂蛹(すいよう)と呼ばれる形態で蛹になる |
羽化中の成虫 羽化直後は翅がしわくちゃだが、しばらくすると伸びてくる |
成虫の前翅長(ぜんしちょう:前ばねのつけ根から先端までの長さ)は約50~60mm、風に乗るようにふわふわと飛ぶ |
アサギマダラの食草
アサギマダラの幼虫は、ガガイモ科の仲間(キジョラン、オオカモメヅル、イケマなど)を食べて育ちます。 高尾山ではキジョランに幼虫の姿を見ることが多く、食痕のついた葉をよく探すと幼虫を発見できることがあります。
キジョラン |
オオカモメヅル |
イケマ |
渡りの謎を解明する「マーキング調査」
「マーキング調査」とは、調査したい対象に印をつけ、その対象を追跡することで、行動の様子などを探る調査のことです。
アサギマダラのマーキング調査では、アサギマダラの翅(はね)に油性ペンで、調査地名、調査日、調査者名などの識別情報を記載します。 後日、印のついたアサギマダラを再調査することで、彼らの行動の過程を予測することができます。
アサギマダラは長距離を飛翔する蝶なので、マーキング調査と追跡調査を一人で行うことは難しく、誰かがマーキングした個体を他の誰かが見つけ、 マーキングした地域へ情報を提供したり、アサギマダラの調査団体などに情報を寄せることによって、調査結果が判明することが主なようです。
高尾山でも時折マーキングされたアサギマダラを見かけることがあり、福島県や愛知県でマーキングされたと思われる個体が見られたこともありました。
直線距離で200km以上飛んできたことになります。アサギマダラの移動性と飛翔力の強さが分かりますね。